2013年07月18日

【オンライン法務部メールマガジン】2013年7月号/第13号/[M&Aとしての株式譲渡の概要と手順]


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技術系・ITベンチャーの実務に役立つ法律・知的財産情報
2013年7月号 第13号 
テーマ [M&Aとしての株式譲渡の概要と手順]
発行 オンライン法務部
http://www.olld.jp/
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[1] メルマガ第13号のご挨拶
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 皆さんこんにちは。梅雨も明け、猛暑の中でもご活躍のことと存じます。でも
熱中症にはくれぐれもご注意くださいませ。

 各士業の専門性と経験を生かしたワンストップサービスを展開しているオンラ
イン法務部からのメルマガ第13号をお送りいたします。

 今回は、少なくない事業者が買手または売手として機会を持つであろうM&A
のうち、中小企業のM&Aにおいて最も多く利用されている方法である株式譲渡
の概要と流れを解説します。

 本稿を読んでおけば、いざその機会が訪れた場合に、専門家に相談する場合も
より実りのある相談となることでしょう。



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[2] M&Aとしての株式譲渡
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(1)株式譲渡とは

 株式譲渡とは、売却企業の株主が、その保有株式を買手の企業に譲渡し、買手
企業が株式の対価として現金を支払うという方法です。

 この方法は、売却企業の株主が変更するだけなので、法人としての当該企業に
何らの変化はなく、会社の権利義務、資産、取引先との契約関係、従業員との雇
用関係等はすべてそのまま存続します。


(2)株式譲渡のメリット・デメリット

 次に、株式譲渡の方法による方法にはどんなメリットとデメリットがあるのか
を見ていきたいと思います。

 【売手側にとってのメリット・デメリット】

  まずは、売手側にとってどのようなメリット・デメリットがあるのかを解説
  します。

   メリット:M&Aの手続が簡易・迅速
     株式譲渡の方法は、基本的には対象企業の株式について、売手と買手
    で売買契約を結び、代金の支払とともに株式の移転を実行すれば足りま
    す。それで複雑で時間のかかる手続を行う必要性が少ないため、簡易・
    迅速に手続を完了させることができます。

   メリット:現金を得ることができる
     株式譲渡の方法は、株式を売却し、その対価として現金を得るという
    のが基本的な方法です。したがって、他の方法と異なり、株式譲渡によ
    って、別の用途に活用することが容易な現金を得ることができます。

   メリット:譲渡益に対する税率
     株式譲渡によって譲渡益が生じた場合も、譲渡益に対する税率が低い
    (執筆時点では国税・地方税あわせて20%)、というのもメリットで
    す。

   デメリット:事業の一部の譲渡ができない
     自社の事業のうち、残したい事業を残し、売却したい事業を売却する
    という目的は、株式譲渡だけで実現することはできません。事業譲渡か、
    会社分割と株式譲渡を組み合わせた方法を使う必要があります。

 【買手側にとってのメリット・デメリット】

   次に、買手側にとってどのようなメリット・デメリットがあるのかを解説
  します。

    メリット:M&Aの手続が簡易・迅速
      売手側のメリットと共通するメリットです。簡易・迅速に手続を
     完了させることができます。

    メリット:権利移転・契約の移転に原則として相手方の同意が不要
      先に述べたとおり、株式譲渡は、売却企業の株主(オーナー)は変
     わりますが、対象企業の主体や法人格に変化はありません。それで、
     従来の取引先との契約関係や従業員との雇用関係等がすべてそのまま
     存続し、契約締結のしなおしや契約の相手方の同意は原則として不要
     です。

      ただし、取引先や融資先との契約、賃貸借契約によっては、その内
     容に、いわゆる「チェンジ・オブ・コントロール」条項(契約の相手
     方の主要な株主が変更になった場合に契約が解除できる条項)が含ま
     れているケースがあり、この場合は留意が必要です。

    メリット:許認可の承継等
      許認可の内容にもよりますが、事業譲渡とは異なり、株式譲渡の場
     合、対象企業が得ている事業遂行上必要な許認可は、株式譲渡後も承
     継できる場合が少なくないといえます。

    デメリット:事業の一部の譲受ができない
      対象企業の事業のうち、一部のみを譲り受けたいという目的は、株
     式譲渡だけで実現することはできません。事業譲渡か、会社分割と株
     式譲渡を組み合わせた方法を使う必要があります。

    デメリット:現金の用意が必要
      株式を譲り受ける場合、通常は、譲渡を受けるための資金を調達す
     る必要があります。

    デメリット:簿外債務等負担のリスク
      対象企業に簿外債務・偶発債務があり、デュー・ディリジェンスの
     段階で把握できないものがある場合、これらが顕在化するリスクがあ
     ります。

      この場合、株式譲渡契約等によって売手側に負担させることができ
     る場合はありますが、最終的に買手側が負担せざるを得ない事態を想
     定する必要があります。


(3)株式譲渡の手続の流れ

 株式譲渡の手続・手順は、一般に以下のとおりです。期間としては、ケースに
よりまちまちですが、3か月〜12か月といわれています。

 なお、通常は、以下に述べる以前の段階として、買手探し(又は売手探し)と
マッチングの作業が必要ですが、本稿では省略します。

 (a)経営者面談の実施

   売手と買手双方が、案件に興味を示し、先に進めることを検討したい意向
  を持つ場合、通常は経営陣(経営者)間で会合を持ち、双方が相手方に対す
  る経営方針や基本的な条件について疑問点をぶつけ、かつ意見を交換します。

 (b)「意向表明書」の交付

   前記の面談等の結果、相互にある程度疑問が解消され、また、大筋の条件
  が双方が想定する範囲に収まりそうな場合であって、買手がさらに話を進め
  る意向を持つ場合、売手に「意向表明書」と呼ばれる書面を交付します。

   この中で、買手が考える買収方法、買収価額、その他の基本的条件を提案
  します。

 (c)「基本合意書」の締結

   売手と買手が意向表明書に記載された内容その他の基本的な条件に合意し
  た場合、この合意条件を明記した「基本合意書」を締結します(いわゆる
  「基本契約」の締結)。

   また、基本契約の締結とともに、多くのケースでは、買手が当該売手と独
  占的に交渉することができる独占交渉権を得るとともに、独占交渉期間など
  も合意され、書面に明示されます。

 (d)デュー・ディリジェンスの実施

   基本合意が締結された後、買手側が依頼する専門家によるデュー・ディリ 
  ジェンス(買収調査)が行われます。一般的には公認会計士・会計事務所に
  よる財務面での調査、弁護士による法務調査(リーガル・デュー・ディリジ
  ェンス)が実施されます。

   会計事務所による調査は、妥当な買収価格の算定(事業価値の把握)、今
  後の収益性、コスト等の分析、簿外債務等のリスクの洗い出しを中心に行わ
  れます。

   弁護士・法律事務所による法務調査は、最適なスキームの検討、売手の株
  式保有状況と有効性、設立から現在までの法令遵守の状況と瑕疵の有無・程
  度、組織上・取引上無効とされる行為の有無、取引や契約に含まれるリスク、
  権利関係の有無と瑕疵の可能性、訴訟や紛争のリスク、知的財産の有無と有
  効性、その他簿外債務の可能性等、多岐にわたります。

   買手は、これら専門家から、デュー・ディリジェンスの報告について書面
  で報告を受けることが一般です。その上で、買収価格、当該株式譲渡による
  M&A取引実行の可否、条件等につき判断します。

 (e)条件の最終交渉と「最終譲渡契約書」の締結

   デュー・ディリジェンスを経て買手が決定・提案する条件につき、売手と
  買手との間で詰めの交渉を行います。

   詰めの交渉がまとまり、すべての条件が合意できると、最終的な条件や内
  容を取り決めた「株式譲渡契約書」を作成し、締結します。

 (f)クロージング・取引実行

   「最終譲渡契約書」の締結後、双方で決済日までに所定の準備を行います。

   ほとんどの中小企業は、株式の譲渡について会社の承認を要すると規定し
  ていますので、売手側は、株式譲渡について会社の承認(取締役会又は株主
  総会)を得ます。また、株券を発行している会社の場合、株券を用意し、そ
  の他会社代表印や印鑑登録カード、通帳類等を引き渡します。

   買手側も、当該株式譲渡が、取締役会の承認を得る必要があるケースでは、
  承認を得る等の手続を行います。また、決済日までに譲渡資金を用意します。

 
            (執筆 弁護士法人クラフトマン 代表社員
                       弁護士・弁理士 石下雅樹)
                     URL  http://www.ishioroshi.com/


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[4] お知らせ〜オンライン法務部メンバーの紹介 阿部尚武税理士
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 今回のお知らせコーナーでは、オンライン法務部のメンバー紹介シリーズその
2として、阿部尚武税理士をご紹介します。

 阿部税理士は、日本大学理工学部数学科を卒業し、その後現在は、千葉市幕張
本郷にて、阿部尚武税理士事務所を経営しており、税理士のほか、行政書士の資
格を有するほか、経済産業省認定の認定支援機関、登録政治資金監査人、2級フ
ァイナンシャルプランニング技能士、日本政策金融公庫農業経営アドバイザーと
しても登録するなど、多彩に活躍しています。

 また、著書として「実務家のための役員給与の税務(共著)」があるほか、論
文として「税理士をとりまく環境の変化〜新たに求められている業務」(『税と
経営』(税経))、「平成22年度税制改正」(『税のしるべ』(大蔵財務協会)
等、専門家向けの税務に関する論文を多く執筆しています。

 さらに、各商工会や司法書士会などで継続的にセミナーの講師を務めるほか、
商工会議所主催「女性起業家経営塾」などにおいても講師を務めてきました。

 さらに2012年度より創設された「創業補助金(地域需要創造型等起業・創
業促進事業)」について、認定支援機関として事業計画書策定や金融機関との調
整を行い、補助金取得の支援などを通じて中小企業を支える業務を行っておりま
す。

 切れ味鋭い税務の専門家として多方面に活躍する阿部税理士がメンバーに含ま
れるオンライン法務部は、技術系ベンチャーに対して、見落としがちな税務面に
ついても万全のサポート体制を持っておりおります。

 今後ともオンライン法務部に是非ご期待ください。

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