2012年07月19日

【オンライン法務部メールマガジン】2012年7月号/第1号/[退職従業員の競業は禁止できるか]


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技術系・ITベンチャーの実務に役立つ法律・知的財産情報
2012年7月号 第1号 テーマ[退職従業員の競業は禁止できるか]
発行 オンライン法務部
http://www.olld.jp/

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メルマガ創刊のご挨拶
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皆さんこんにちは。連日の猛暑の中、皆様におかれては益々ご健勝のことと
お慶び申し上げます。

さて、各士業の専門性と経験を生かしたワンストップサービスを展開している
オンライン法務部は、この度、皆さんのビジネスや企業経営に活かしていただくための
情報提供の機会として、メルマガを発刊する運びとなりました。

当面は、毎月20日前後に、月刊のペースで発刊して参ります。
この情報が少しでもお役に立つならば幸甚です。


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今回のトピック 退職従業員の競業は禁止できるか 
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(1)従業員の退職後の競業は禁止されるか

 技術系企業(特にIT関連)などにとって、最も大切な経営資源といえるのは、
知的財産を含む技術のほかに、人材(人財)といえるでしょう。そして、人の移
動や入れ替わりも多い会社が多いと思われます。

 それで、自社の技術等の流出をできる限り防ぐために、退職従業員に競業の
禁止をしたいと考えるかもしれませんが、法的に認められるでしょうか。


(2)特別な合意がない場合の考え方

 まず、会社と従業員との間で、退職後の競業を禁止する合意がない場合につい
て考えます。

 この点裁判所の基本的な考え方は、元従業員の転職の自由や独立開業の自由な
ど職業選択の自由が広く認められることを大原則とし、社会通念上自由競争の範囲
を逸脱したという特段の事情がない限り、退職後の競業行為は違法な行為(不法行為)
とはならないという立場を取っていると理解されています。

 つまり、従業員は、就業規則に退職後の競業禁止が規定されていたり、その旨
特別に合意をしている場合には、次項で申し上げるとおり、一定の範囲について、
退職後に元の勤務先と競業を行うことはできませんが、このような合意がない場
合は、原則として、退職後に元の勤務先と同じ業務であっても自由に競業するこ
とができるということになります。

 ただし、この場合であっても、元の勤務先の営業秘密に関する情報を用いたり、
信用をおとしめたりするなど、その競業行為の内容・態様が自由競争の範囲を逸
脱し違法、不当と認められる場合はあります。しかしこれは、例外的な場合といえると
考えられます。


(3)特別な合意がある場合

 次に特別な合意がある場合には、一定の要件のもと、一定範囲で競業禁止の効
力が認められます。この点、以下の点に留意する必要があります。

 まずは競業避止義務の特約を就業規則や社員の誓約書に明確に謳う必要がある、
という点です(誓約書のほうがより好ましいでしょう)。確かに、例外的な場合
には、明確な規定や特約がなくても結果的に裁判所が競業行為を違法と判断する
可能性もありますが、基本的には明示の特約がない限り難しいと考えておくべき
でしょう。

 また、この退職後の競業避止義務自体、経済的弱者である労働者の生計の道を
奪いその生存を脅かすおそれがあることから、就業規則や誓約書などで定めたか
らといって無制限に効力が認められるわけでもありません。特約の内容(競業避
止の内容)が必要最小限であり合理的であることが必要です。

 この合理性の判断は、以下のような要素から判断されることになります。

 A 労働者の地位・職種
  会社の重要な機密やノウハウを持っていると認められるような地位・職種に
  はない労働者に対する制限は無効とされる可能性が高いといえます。

 B 制限の期間
  期間無制限の競業避止義務は無効とされる可能性が高いといえます。退職後
  1〜2年、せいぜい3年程度という場合が一般的です。

 C 制限の場所
  競業避止の場所的範囲も重要となります。特別な事情がないかぎり、地理的
  範囲を無制限とする特約は有効とされる可能性は低いでしょう。

 D 代償の存在
  課される制限に対して、労働者に対する経済的代償がなされることが、多く
  の場合求められます。在職時に特別な手当が支給されていたとか、退職金の
  増額、手当の支給という形で退職時に代償を支払うといったことが求められ
  ます。この場合、競業規制期間中の元社員の生活保障という見地から評価し
  て見合うものである必要があると考えられます。


 以上のとおり、退職後の競業避止義務を課すことのできる場合や、その効力は
大変難しい法的判断が伴います。特に重要な社員が関係するケースなどでは、
個別事情を踏まえ、弁護士などの法律専門家に相談しつつ競業避止義務の内容を
慎重に検討する必要があると思われます。

 なお、本稿の内容のうち、意見にわたる部分は、執筆者個人の見解です。
             
                             (執筆 弁護士・弁理士 石下雅樹)
                              http://www.ishioroshi.com/

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